低体温/さくらほ
 
ぐらりと揺れたのは
景色じゃなくて私だった
見知らぬ若者に少し体重を預けバランスをとる
助けてはくれないが積極的に拒みもしない
そんな時代だ

電車を降りて足早に地下道を歩く
私の前には背中がいっぱい
饒舌で
無防備で
明け透けで
後ろ姿はなんて恥ずかしい
私も誰かに後姿をさらしている

横断歩道を草食動物と肉食動物が
肩を並べて歩いてゆく
どちらが食うか食われるか

お店に入り
ちょっとコスプレちっくな制服に着替え
店内に負けぬ人工的な外を見る
ガラスの向こうは二倍速
たった今まで自分がいた場所なのに
その光景に目が回りそう
この街に青は似合わない
[次のページ]
戻る   Point(15)