花夢人/和泉蘆花
時を旅して出逢ったふたり
お互いの写真をこころで持っていた
二枚の写真を重ねあわせることができたなら
夢で逢えた 君
河原を一緒に歩いたね
冬風はとても寒くて
ポケットに二つの手を入れた
細くて壊れそうな手を
夢で逢えた 君
わたしの帽子は飛ばされて
君は帽子を拾いにゆくと
わたしの前から去っていった
細い腕を振りながら
河原で佇んで見送るわたし
笑顔で走ってゆく君の姿
また逢えるかも知れないと
淡い期待をわたしは持った
右ポケットに君の写真が
隠れるように入っていた
いまにも泣き出しそうな顔をして
桃色の口紅 とても綺麗
残った君の調べを大切に
冬の空に祈り届けて
わたしは次の夢へ
河原に広がる白い花たちを
目印に覚えて
わたしは次の夢へ
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