三分間の恋人/千月 話子
 
写真を撮ろうよ 二人のね。
緩やかな波打ち際で待ってるよ。

君はカメラを誰かに託して
僕の方に駆けてきた。

嬉しそうに笑う君が何となく
幼く見えて可愛らしかったものだから
僕は思わず俯いて
小さく「クスッ」と笑ったんだ。

両腕を広げて抱きついた君を
僕も優しく抱きしめた。

「好き」は不思議な作用で
二人を眠らせるんだね
だから あまりの心地よさに
目を閉じてしまうんだろう。

そんな甘色の時を遮るように
カメラのシャッター音が
「もういいだろ?」と
耳に届いたから
僕は思わず君の手を離してしまった。

名残惜しそうに
カメラの元に走り去る君を
僕は目で追いながら
”ごめんね”と心の中で呟いた。
「ごめんね」と甘やかに囁いた。

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