「時間という地層」/広川 孝治
掘り起こされてもそこら辺の土くれと共に
投げすてられ忘れ去られてゆくのだ
その恐怖を忘れるため
同じ時代を共有した人たちと
懐かしい話を飲みながら打ち上げ
ナツメロの一つ二つを高らかに歌い上げる
埋もれたくないから
何かを成し遂げようとするかもしれないが
たとえ功成り名を遂げても
時の経過と共に冠がつく
「歴史上の人物」と
容赦なく降り積もる時の重さは
若い頃には気づかなかった独特の寂しさと諦めを伴って
僕を押し包んでゆく
時代の移り変わりの中に生きる平凡な個人
そんな当然のことを改めて噛み締め
同時代の仲間と共に生きてゆこうと思う
想い出を抱いて
化石になるまで
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