おおきい橋ちいさい橋/yangjah
 
水の都

おおきい橋
ちいさい橋
越えて
越えて


ふたつめの大きな戦争がはじまる前に
船にゆられて日本にやってきた
おばあは
メリヤス工場をさぼるように言われ
大阪の橋の上で
おじいと待ち合わせて
奈良公園で
鹿を見たそうな

日本語のできないおばあと
韓国語のできないおじいは
同じ村の出身
見ぶり手ぶりで生きる


水まとう都

おおきい橋
ちいさい橋
越えて
越えて


そして
孫の
わたしは
今も橋を越えつづける

ふたつの言葉を
高い声
低い声
でささやきながら

最後の恋にしよう
最後の人にしよう

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