春の陽射し/atsuchan69
 
白藤の棚にそよぐ 薄紫の風に
邸(やしき)じゅう、色めきたつ菫(すみれ)たち

草葉の緑に、ふるえる白いドレスの君。
房を垂らした大きな帽子から、ほんの少し
零れる笑みと恥じらいを覗かせて
刺繍飾りの胸に たわわな肌の色も眩しく
艶やかな温みを帯びた 命さながら

森から来た知らせは、赤い実の収穫
摘んだ野苺に添えた小さな花
君は、微風にゆれる野山を駆けめぐり
悦びのうたを口ずさむ、雲雀のように鳴く「蕾」

春の陽射しが降りそそぐ古い小屋の窓辺
蕾よ、噤んだ口元の愛らしさ
その無垢なる唇に キッス! 
命よ、どうか終わらないキッスを

熱い吐息を君にあげよう
狼の咆哮にも似た 言葉なき想いを
獣のごとく荒々しい動作で奪う
露わな声、その総て

かよわき枝の芽吹くものたち
春告鳥(うぐいす)の囀りも ふたたび









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