馬頭観音にて/結城 森士
 

昔住んでいた地域の
大きなグラウンドで
サッカーボールを蹴って
一人で遊んでいた
まるで幾人もの友人達と
戯れているかのように
それはとても
楽しい夢だった

あの日の冬の風の匂いも
友達のか細い心臓の音も
僕の華奢な指先の凍える痛みも
頼りなく打ち付ける鼓動も
鼻から吸い込んだ
冷たい灰色の
苦しい空気も
転んで
飲み込んでしまった
砂利屑の味さえ

もう戻ってはこない
もう戻ってはこない



*良い夢*

例えば、あなたが馬頭観音の前で出会った何人もの人々と
再び笑って会話をし、
あなたは皆から大事にされている
あなたは、良心的な心情を何も言わず
(言う必要も無い)
もう、人を繋ぎ止める心配も要らない
(心配など必要ない)
あなたは、何も言わずに
微笑んでいられる
何故なら
楽しい夢だから
楽しい

夢。静かな、薄暗い朝(太陽は見えなかった)



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