ハニー。/なを
 
野良猫を抱くようにして可愛いひとの痩せた腰に触れる
赤茶けた髪はうすめられた不幸と暴力の匂いがする

わたしたちの知る世界の
あまねくすべての場所にたちこめるその匂いを

よく生える蔓草のようにそこやここを這いまわり
わたしがなにによって生えているかわたしじしんが知らない
あたたかいほうへ身を捩らせてぬるい水を惚けたように味わう

生乾きのわたしたちをおりまげたたむように髪と肩と
ゆびと骨とかさねあわせてじっと目を閉じて
濡れた髪が乾くまでのあいだの
所在なさがわたしに与えられるうちでいちばん甘い蜜だ

あなたがわたしを養う蜜ならばいいのに

戻る   Point(4)