旅人/相良ゆう
 


僕が子供の頃
山は僕の遊び場だった

鬱蒼とした山奥の
社へと続く長い長い
杉の並木道を歩くのが
僕の一番の楽しみだった

ある日
苔むした大きな杉の下に
寂しそうに男が腰かけていた


好奇心旺盛だった僕は
彼に近づいていって彼に尋ねた

「おじさん なにをしているの?」


彼は答えた

「旅を しているんだ」


僕は聞いた

「どうして旅をしているの?」







「居場所を 探しているんだ」

彼は静かに応えた
でも僕には彼が何を探しているのかわからなくて
もう一度彼に尋ねた

「居場所って 
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