旅人/相良ゆう
1
僕が子供の頃
山は僕の遊び場だった
鬱蒼とした山奥の
社へと続く長い長い
杉の並木道を歩くのが
僕の一番の楽しみだった
ある日
苔むした大きな杉の下に
寂しそうに男が腰かけていた
好奇心旺盛だった僕は
彼に近づいていって彼に尋ねた
「おじさん なにをしているの?」
彼は答えた
「旅を しているんだ」
僕は聞いた
「どうして旅をしているの?」
2
「居場所を 探しているんだ」
彼は静かに応えた
でも僕には彼が何を探しているのかわからなくて
もう一度彼に尋ねた
「居場所って
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