La cité des enfants perdus/Utakata
 
のほうへと向き直って
 にやりとした笑みを浮かべたらしい
 新宿行きの急行列車が
 当たり前のように走ってきて
 彼を
 」

にやりとした笑みを浮かべたらしいんだ

――僕は指先に走る痛みの速さのことを思う
二の腕に浮かぶ血の珠の重さを
震えていたナイフの先に付いた
舌先に付いた
血の味のする電気信号の速度のことを

今夜も君に手紙を書く
空色をした細いボールペンを使って手紙を書く
角ばって震えたいつもの癖を持つ文字で手紙を書く
封筒を取ろうと引き出しを開けると
そこには無数の遠くから来た絵手紙
例えば それは
それはゴダールの声
それはシャガールの色
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