無為自然、苦しみて、苦しむことなく。/生田 稔
。神は一人しか居ない。私たち人間は食うて、着てなんぼではないか。霧の立ち込める深山、聳え立つ堂宇、有り難いと手を合わす義姉。それで良いのではないか。
わしらは阿呆やと、心の中でつぶやいた。馬鹿と阿呆の鬩ぎ合い、それが世界と人生である。そして、この小説の題を「無為自然」とした。老子は実在の人ではなかったという説もあるが、そうではなかろう、老子が居なかったなんて淋しいことだ。人は、シェークスピアもジンギスカンさえ居なかったことにしてしまう。
若いころ読んだソ連の歴史教科書にはイエスも居なかったことになっている。わたしが卒業した奈良の大和の天理高等学校。私にとってこれほどなっかしい学校はない。そ
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