そして、歩いてゆく/さち
 


あの日
砂利道で蹴り上げたものは
小石 なんかじゃなくて
はっきりしない哀しさだった

どこかに行けそうな気がするのに
行くべきだと思うのに
どこにも行けない自分だった

何かになろうと思ったのに
何にもなれずに
育ちきらない自分のままで
今も
こうしていることだった

  道端に咲く花が
  やけに一人前に見えた
  少し笑ってみせたのは
  可愛い花だと思ったからなのか
  自嘲的な笑いだったのか
  ただ
  少しだけ呼吸が
  できたみたいで



砂利道は舗装されて
アスファルトになり
蹴り上げた足は
ただ虚しく
ぶつか
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