エルエスDay/李恵
 
ここは暗い。


メトロノームの三拍子が聞える。

眠い。

目をあけると草が生茂っていた。

葉の上によじ登る。登れる。
僕は今蟻よりも小さいのだと考える。
どんなに歩いてもどこへも行けない。
どこに行けばいいかわからない。

僕より数倍もでかい猫はメガネをかけて踊っている。
「ここは危険だ」
猫はブラックホールのような黒い穴に身体を詰め込んで去っていく。

空を見る。
空にはうっすらと黒い線が走っている。
四角形の黒い線が次第に強調されて空が落っこちてくる。

猫が通りすぎた穴は徐々に小さくなった。
僕は通れる。だけどどんなに歩いても穴は平行に後退りをする。

僕は空に潰された。



僕の左手には有刺鉄線が巻きついている。
それはどこにつながっているのかわからない。
目の前に壊れたフェンスはなく不自然に立ち塞がるドアがある。



僕はただ眠かった。

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