エルエスDay/李恵
 


僕の左手には有刺鉄線が巻きついている。
それはどこにつながっているのかわからない。
目の前には壊れたフェンスがあって
入り口を思わせるかのようにそこだけ蹴破られている。

左手を動かすと有刺鉄線が食い込んで痛みを与える。
けれど痛みよりも寒い。ここは寒い。
目を閉じているかの如くここは暗い。

フェンスの奥では煙が立ち上がり
白い煙は無数の人の苦痛の表情が見えた。
留まることなく精密機械のように苦悩の表情は流れていく。

僕が歩く。石を蹴飛ばした。
石ころが重力に逆らえずに下へ落ちていく。
灼熱のまぐまが下にある。
フェンスの先はガケだ。
ここは寒い。ここ
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