浮遊する夢の形状    デッサン/前田ふむふむ
 
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鎖骨のようなライターを着火して、
円熟した蝋燭を灯せば、
仄暗いひかりの闇が、立ち上がり、
うな垂れて、黄ばんでいる静物たちを照らしては、
かつて丸い青空を支える尖塔があった寂しい空間に、
つぎはぎだらけの絵画のような意志をあたえる。
震える手で、その冬の葬列を触れれば、
忘れていた鼓動が、深くみずのように流れている。

わたしの耳元に、幼い頃、
おぼろげに見た、赤いアゲハ蝶が、
二度までも舞う気配に、顔を横に寝かせれば、
静寂の薫りを運んで、
金色の雲に包まれた、羊水にひたるひかりが、遠くに見える。

あの霞のむこうから、わたしは来たのかもし
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