夜雪酒/蒸発王
ちそうな程
夜空から身を乗り出しているのを見ると
奴らも雪みたく
落ちて逝きたいのかもしれませんね
独りは
寂しいものですから
雪で無くとも
人で無くとも
何かに犯され
染められて
落ちて逝きたいのでしょうよ
ああほら
善けない
私も酒に染められてしまった
蜘蛛は笑い
釣り下がった姿勢のまま
くるくると回った
黒い蜘蛛の足は
米酒の白さで少し白くなっていた
私は窓を開けて振ってくる夜色の雪を
おちょこで受け
蜘蛛に渡したら
夜雪を飲み干した蜘蛛は
元の黒さに戻り
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