落し物/水町綜助
街灯で出来た僕の影を、後ろから出てきた新しい僕の影が追いかけ、でもけして追い越すことが出来ないでいるのを見ながら、僕はオレンジ色の夜道を歩いていた。
家までの道のりを歩いてきてここまで何分くらいの時間がかかったか?
そんなことを思いながら赤信号で立ち止まり、すこしボンヤリしていると、横に立っていたひとから突然声を掛けられた。
僕は彼を知っていた。
そのひとは、さっきからずっと僕の近くを歩いていた男のひとだったからだ。
黒いヘルメットを被った彼と、抜きつ抜かれつしながら歩いてきたのだ。
彼は僕の肩をたたいて言う。
「あのうさっきなにかおとされましたよ」
僕はびっくりして、「え?なにを
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)