うなばらをこえて/李恵
 
身体でベランダを乗り越えようとしている。
でも、たりないね。届かない。
私はベランダからおとなりさんの家にお邪魔してドラフトを抱きしめた。

ドラフトは賢い犬だったから、ドラフトはいつも空をみてた。
見えてたんだと思う。ドラフトには君が見えていた。

ドラフトは私を潤んだ目で見つめて頷いた。頷いたように見えた。





恐い?
恐くない。

飛べる?
飛べるよ。

大丈夫、またあえるさ。




一人と一匹はベランダからプールにダイビングするみたいに綺麗な放射線を描いて
コンクリートジャングルに吸い込まれた。





またね。






この空の色を表す言葉はこの世にはまだない。
けれど美しい。美しいからこそ言葉など必要ないのだ。

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