二人兄弟/湾鶴
 
道中 キモミミズは、兄の横顔を見ていた
兄ちゃんの髪はヤモリのお腹みたい
橋の苔はツルツル
足の甲はトゲトゲ

今からケイバに行くところ
葉が踊りざわめつく

天井から、アナウンス
「本日はご来場 誠にありがとうございます」
「中へお入りください、速やかにお進みください」


震えながら、兄ちゃんの手をつかんだ

静かに扉が開く
 
兄はキモミミズの背中をなで、頬にキスをした

緑光の中 キモミミズはうなずくと目を硬く閉じ         
大きな声で叫んだ
「よろしく おねがいしま

そう 言い終わらないうちに


キモミミズは沼へ沈められてしまいました。 

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