12年/野薔薇
達の体験記は、
その当時の私には本当に恐ろしかった。
密かに毎晩毎晩、もしかしたら明日このような事が、
自分に襲い掛かるのかもしれないと思っていた。
明日大好きな誰かを失うかもしれない。
この生活が180度変わってしまうかもしれない。
だけど時間とともにその恐れも薄れていっていた。
そして気づいたら、今、その当時の面影を残すものは、
殆ど消えていっていた。
辛い思い出から大好きな町が回復していく様を見るのは、
素直に嬉しい。
けれど、ただ前に進むだけじゃ何も始まらない。
過去から何かを摘み取って、初めて行き先という未来が、
見えてくるはずだから。
今はあの町からは離れた場所に居るけど、心はいつもあそこにあるから。
それを覚えて、これからもあの町と共に歩み続けたいなと思う。
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