あいなきせかい/大覚アキラ
 
が次々に生み出され
恐るべき速さで画期的な進化を遂げていき
どれだけ殺してもどれだけ殺しあっても
なかなか減らないその生き物は
思う存分に暴力を愉しんだ

猿に似た生き物の繁殖力と
彼らが振るう暴力の均衡は
ある時を境にあっけなく崩れ
一夜にしてその数は激減し
あっという間に最後の二匹になった

猿に似た生き物の最後の二匹は
しばらくは力を合わせて生き延びていたが
蓄えてあった餌はどんどん減っていき
やがて最後の一つになってしまった
残された一つの餌に片方が手を伸ばした

終わりも
とても単純なことだった
猿に似たその生き物は
仲間の餌を奪おうとして
その喉笛に噛み付いた
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