芽吹く/ウデラコウ
「春は すぐ そこですよ」
通りすがりに 誰かが私に 声をかけたのです。
私は 驚いて辺りを 見回して そして誰も私を 見ていないことに 首を傾げました。
春が すぐそこだなんて まったく 可笑しなことを言うもんだと
私は 色づき始めた 木々の葉を見上げてそっと肩をすくめました。
「もう春に 出会いましたか?」
またしばらく歩いていると 誰かが私に 声をかけました。
私は 大層重い荷物と疲れた身体を引きずっておりましたのでそんな声に振り向きもせず
散りだした木々の葉の中を 歩き続けました。
「春が あなたを 待っているんですよ」
夜中に 誰かが私の肩
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