憂い/カネコ□イ
 
居酒屋で取り残されたマフラー

その日は至極寒い夜で

私は誰かの温もりに触れたかった。

そのまま、ぎゅっと抱きしめて

私はそのマフラーと一緒になった。

俺のマフラー

マフラーは
「一度、抱いたからって
あなたのものになったんじゃないわよ」
と言った。

やる瀬なくなり、

マフラーの端に目をやると
PAUL SMITH

と書いてあった。


なんだ、イギリスの男か、

私は少し笑った。
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