クチナシの木の満開の下/蒸発王
 
の傷から
なかなか身体を開けぬ女は
埋め合わせのように接吻をねだっていたが
いつしか溶け合い
そして


そして
矢張り
子は出来なかった

離縁はされなかった
男は女を愛していた
埋めるように接吻もした
それでも
女は梔子が食べたくなってしまった

季節は冬

梔子などあるはずも無く
女は貯めていた壷を開いた
と一瞬で
女は視た
壷にある八重咲きの梔子の大群は
全て小さな胎児に見えた
八重咲きの梔子は
       実を結ばぬ
         子無しの花

食らっていたのは
己が卵子か

薫りが
強い白い大きな
薫りが女
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