入れ歯/茶釜
 
仏壇の奥から
じいちゃんの入れ歯が出てきた
まるで貝のようにぴったり重ねてあって
今にも「がははは」とじいちゃんの声で笑い出しそうだ
でもじいちゃんは小さい時の僕を
よくこの入れ歯でびびらせた

その、カパッと取れたぜったい取れるはずのないものが
今にも僕に噛み付きそうな感じと
人相の変わってしまった別人の人の登場に
頭がパニッキになって、いつも泣きそうだった、
そしてから
専用の歯ブラシを出すと
別人のじいちゃんは
見覚えのあるおわんにお湯を入れて
自分の一部をふがふが息をしながら洗い始める
ふがふが、ごしごし
ごしごし、ふがふが
世にも不思議な光景だった

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