風車のある風景/夕凪ここあ
 
粉挽きの風車の家
屋根裏で
ほこりまみれの古い本を読んで
知らない国の知らない言葉を見つけては
お父さんに読み方を教えてもらう少女
小さな窓から覗く世界は
どこまでも草原で
ためしに口笛を吹いてみても
遠い国には決して届かない
置き忘れられたように佇む風車は
それでもやわらかい風を孕んで
休むことなくまわり
今日も一日粉を挽いては
少女の好きなくるみのパンを焼く
お昼ご飯を食べたら
一面の草原に寝転がる
風車の影が不思議な形を落として
空の中心に向かって
知らない国の知らない言葉の詩を声に出してみる
風向かいにあるかもしれない国が
なんだか昨日より近くなった気がした
足元の花を編んだ花かんむり
を頭に乗せればそっと風がさらって
どこまでも続く草原の終わりまで
編みこまれた少女の夢を
やさしく運んでいく
止むことのない風が風車をまわす
明日もその次も
穏やかに続いていく
風車のある風景
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