お月さまの詩集/秋月 笑
 
とめる

貴女は夜空の母
コバルトブルーの空は その広い心の一部
今宵も 目を閉じて
ひとりで夜を奏でている


2 喪失

貴女のいない夜

つめたい雨がつくる
道のうえの でこぼこな鏡にうつった

あの輝きは貴女
ではなく、冷たい街灯のひかり

雨粒を一瞬
浮き彫りにしては さらってゆく

あの輝きは貴女
ではなく、つめたい車のヘッドライト

貴女がいない夜は、

空ばかり灰色で
夜の街は真っ暗で
造りモノの輝きだけが
行き来しているつめたい夜

タイヤが雨を噛む音
信号が青にかわる

貴女は
どこへいった……?


3 かくれんぼ

みあげれば 家並みのあいだに
かくれんぼしてるお月さま

さがしにくる誰かを 待ちつづけて
わたしはここよ って
ぼんやりひかって合図してる

誰か 貴女をむかえにいくだろうか
まい晩、まい晩 待ちくたびれて
朝日に消えてゆくだけの
貴女を 誰か

みつけた! って
つかまえにいくだろうか
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