ジョギング/三州生桑
 
えてくる。
「まだ若いよ、二十歳ぐらゐぢゃない?」
「可愛い子なのに・・・」
「・・・手首と頸動脈・・・」
「頸動脈も?」
「何で排ガスにしなかったのかなぁ」
「正月早々・・・」

カリカリを食べ終へた猫は、車の下に潜り込んで丸くなってゐる。しばらくは、エンジンの余熱で温かく眠ることができるだらう。
私は清冽な酸素を肺一杯に吸ひ込み、ゆっくりと走り出す。新調したスニーカーの具合が良く、脚が軽い。
そして徐々にスピードを上げ、まだ仄暗い公園を一人駈け抜けてゆく。
美しいあの人の、薔薇色の微笑みを思ひ浮かべながら。


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