二つの灯台 デッサン/前田ふむふむ
1 眠り
朝の眩暈のなかで、
一日の仕事を終えて、疲れ切ってから――、
職場に出かけても、
そこで、わたしにできることは、
只、泥のように眠ることだろう。
(そこには、青い灯台が、真昼に、てんめつしている。)
夕暮れの瞬きのおく、
手狭な風呂に入り、
家族と夕餉を親しみ、
居間でひとり静かに音楽を聴いてから――、
夜に家に帰ってきても、
そこで、わたしにできることは
只、泥のように眠ることだろう。
(そこには、炎の灯台が、雨に濡れていて、
灯火も焚けないでいる。)
眠りのなかで、
ツンドラの蒼茫と
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