切断と鏡像と/佐野みお
切断された こ、と、ば
断面から折れこぼれ
中途までしかあなたに届かない
だから背を向けたのですか
断ち切られた視線
くちびるのあかぎれ
私は し よ を横に並べて
は に見立てようとしている
はな、の、は
はる、の、は
はね、の、は
あなたに贈ろうとしている
鏡に映りこむ文字
そういえば子どものころ
さ をいつも左右逆に書いた
さみしい、の、さ
さよなら、の、さ
さくらちる、さ
鏡に映る私の顔と
あなたが見る私の顔は
重なることはない
だから背を向けたのですか
いつも鏡は割れる
像は切断される
どこを探せばいいですか
ことばの欠片も鏡の破片も
混ざり合ってちかちか光る
そんな路上に屈みこんで
あなたを見送っている
戻る 編 削 Point(4)