影追い/夕凪ここあ
 
背伸びをする草から
あの日とまるで同じ夏の匂いがする
何もかも覆いつくしていく夕焼けに君の影
このまま行けば海に出る
どこにも姿は見当たらないというのに
影ばかりを追いかけている
また
海の手前に停車する

この先に行く方法を知らない
明日はいつもと違う車両に乗り込む
辿りつく場所が毎回同じだとしても
少し遠くまで行けるように
線路の先に
まだ夏の終わりは見えない
伏せ目がちな君の手を握り締めたまま
いつまでも加速し続ける
やけに色素の薄い夏の日
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