さかさなみだ/夕凪ここあ
真夜中
のどの乾きに目を覚ましコップの水を飲み干すと
小さな波音が聴こえて不安定になる
部屋の隅で水槽は
溺れそうなほど満水で
薄いガラスを軽く叩くと
魚は眠るのを忘れてため息によく似た泡ばかり吐き出す
よく見ると涙にも似ている
蛍光灯の下でいくら泳いでも
どこかに辿りつくことなんてない
ことを知っているような虚ろな濁った目の魚
こんな夜は
不安定な波音が渦巻く水槽を抜け出して
あたらしい呼吸でも見つければいい
そうして夜をやり過ごす
ひとりベランダで
なるたけ低い
星との距離を測りながら
戻る 編 削 Point(12)