蝶変化/きりえしふみ
あの小さな恋が終わって
零したのは少なからずの涙
残ったのは心地よい 何処かしら懐かしい 小さな切なさでした
けれど この大きな恋が終わって
零したのは数え切れない笑い
私がせっせと私の中で育んだ 女の煌めき
……七色の花びらのような キラキラとした優しげな眼差し
私が毎朝水をやり 世話をした その微笑を
私は一度の恋ですっかり落としてしまいました
……それは まるで 花びらを落とした淋しい植物のようです
日はもう西方へ沈みました
太陽だったあの人も すっかり遠くへ過ぎ去りました
後はか細い茎のような青白い身体が残るだけです
私はこの先この身を何処へ植えるのでしょうか
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