■批評祭参加作品■田村隆一の「腐敗性物質」について少しー初期の田村の詩世界/石川和広
 
大きな影としての「人間」「声」だったろう。
 田村の場合、詩は「部屋のない窓」、つまり内部のない入り口としてあって、詩の世界を克明に描かず、空白として描く。これは、田村が「世界」を守ろうとする気持ちから、とられた手法だろうと思う。どちらかといえば「情」で書いていた人だと思う。知的に処理していって、仕切れないものをぎりぎりのところで書いている。それが記号としての「言葉」の拒否につながっていると思う。やわらかな「情」が、硬い形式を選んでいった気がする。そこから「自然」への愛が出てくると思う。女性へのナイーブさも現れていると思う。思ったより素直な表現だと思った。「死体」という表現も出てくるが、否定の、
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