マネキンに恋をした/プル式
毎日大層綺麗な服で
物憂げな瞳で空を見上げる
日中は動かずに
ただ静かに仕事に励み
他の事には一切関与しない
回りの仲間からはきっと
付き合いが悪いだとか
彼氏いないんだってとか
好き勝手言われてるのかも知れない
けれど彼女がそれをキにする様子は無い
ある日僕が仕事で疲れて会社に戻ると
みんなもう帰ってしまった後だったのに
彼女だけは少し心配そうな顔で
窓から外を見ていてくれた
電気をつけると眩しかったのだろう
少し目に影をつくってまだ外を見ていた
困った事にその横顔が僕の心に釘をさした
「私に好意を持つのは勝手だけれど」
そう言っているようだった
いや言われたのだろうか
僕はその日から彼女に恋をした
それはもう落とし穴に落ちたように
世界は何も見えず
ただ自分の落ちた穴の先にある
彼女の横顔だけしか見えない
僕は彼女に言葉を伝える術を知らない
叫んだ所で伝わるのだろうか
僕は彼女に恋をした
彼女の薄いブラウスにときめいている
戻る 編 削 Point(11)