夜にかけた梯子/しめじ
 
暮れてゆく空に
消えていった電車
曲がり角の先にある想像上の一点を
祈るようにして見つめていた
街外れの鉄塔が夕日に照らされている
灰まみれの外壁を見つめたまま
歳の瀬はやってきて風と一緒に海へ帰る

太陽の余韻を飲み込んで
ゆっくりと空の質量が変化していく

「行かなくちゃ」

行き先も告げずに消えた君
耳を削ぐような冷たい風に乗った
髪の香りを思い出せない
そして太陽は止めを刺された

夜と言う名の雪が降り積もり
今年最後の月は蛍光灯塗れだ
人口の夜が始まって
聞こえてくる賑やかな家族の声
逃げるようにして電車に駆
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