■批評祭参加作品■夭折をあきらめて夜が明けてゆく/岡部淳太郎
 
事、世の中に対して誇れるような「自分はこれだけのことをしてきた、これだけやったのだから後悔はない」と言い切れるような何かを残してから死にたいと願ってきた。それは具体的に言えば自分の詩作のことであるのだが、二十代中盤でまだ惑いの中にいた僕はいまだ何も成し遂げてはいなかった。相変らず猛烈に書きながら、これでは駄目だ、この程度では世間に対して自分を証明したことにならないと、自らに対して常にいらだちつづけていた。そうやって孤独な詩作に公の仕事に日々を過ごすうち、僕はいつしか夭折という観念を忘れ始めていた。僕は三十歳を過ぎ、相変らず何も成し遂げられないままだった。ノストラダムスの一九九九年は、何事もなく過ぎ
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