書簡A/青色銀河団
結び目をほどくように、
この世からすべての母は消滅してしまったので、
わたしたちは何度でも
てのひらに
母と呼べる何物かを乗せては、
黄昏にそれらを透かして、
祈るように検分し、
うれいをひきずりながらも、
いきてゆかねばならない。
電算機が計算し続けても
永遠に解にいたらぬもの。
博物館に陳列された白い羽根の硬度や、
菫色の傘をもつ母の肩越しの虹曲線、
月光に濡れた憂愁の貝殻のひびき、
いつかそれら古いことばがたち現れ、
にじんだ誰かの手紙となり
ようやく配達されるまでの、
永遠の時間のなかで、
わたしたちはたゆたう。
そして
詩人のこころをゆさぶる、
かすかな共和国のひびきにゆらぎつつも、
わたしたちの遠い死までのあいだ、
とじられたまぶたの裏側で、
不安な眠りをひきずりながら、
夜明けの時刻を待ちづづけるのだ。
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