ノート(ある冬のうた)/木立 悟
ふるらふらるる
風うごかして
冬の晴れ間の
鈍(にび)のたびだち
雪に隠れた原おだやかに
駆けても駆けても
昼のお帰り
てててて まわる
うたのかたち
鳥が残した
響きの軌跡
てててて まわる
うたたねのうた
重ねやわらか
川へ 川へ
押入れの奥
わるだくみ
布団ころがす大海賊
たたみ八畳
大海原の
お菓子(たから)この手に
いざいざゆかん
てててて はせる
水のかたち
木々を伝って
降り来る拍手
てててて はせる
流れゆく音
しぶき そのまま
海へ 海へ
冬の長靴
羽模様
合羽 照るてる
天気雨
道をすべる灯りを数え
お風呂のいちばん
めざして駆け出す
てててて うたう
白い火のうた
海辺のひかり
森へ吹く色
てててて うたう
尾の跡 足跡
砂の木の笑み
空へ 空へ
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