閃光/杉菜 晃
電車が大都市のビル群を
抜け出すと同時に
車内に閃光が走った
乗客はすわ核爆発と
その場に伏せ
椅子の陰に身を隠した
しかし十人ほどは
吊革に掴まったままだ
間もなく
雲の裂け目に跳梁する
夕日の悪戯と分かって
元の状態に戻った
十人は依然吊革に掴まったまま
乗客の慌てふためきにも
その後の反応にも関心を示さない
おそるべきは十人の内実だ
核爆発をも懼れない
世に疲弊し絶望しているものが
一車輌に十人はいるということだ
百人の乗客がいたとして
十人は十パーセントに当たる
私もその中の一人だ
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