レクイエム/茉莉香
 
 キラキラとした日の光の中
 私たちは真っ黒な服を着て歩く
 眩しくて目が開けていられない
 道は真っ直ぐあの方の元へ
 皆無言で手に持った鞄を握り締めて
 
 会場に着くと見覚えのある人々が
 黒い服を着てどこか足が地に着かぬような
 心が飛んでいってしまったような顔で
 挨拶をする
 
 静まり返った会場
 知った名前のある供花
 白い花に戯れる如く
 あの人はゆったりとした顔で
 眠るが如く そこへ

 まだ若いその命
 会社の人たちは泣き崩れ
 酔い 起きろと叫ぶ
 なぜだ そう声にならない表情で
 涙にすらならない絶望の眼差しで
 動かない彼を見つめる

 そのとき ふわり
 風が入った会社の人を喪主の方を
 皆を包み込み ふわり
 息を止め 先ほどまで起きろと叫んでいた
 泣き崩れた人は 目を見開き
 頬を伝う涙を忘れる
 彼はそこに
 皆を見つめ笑っている 愛してるよと
 そんな気が した
 
 
 
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