欲深い祈り/渦巻二三五
 
もうこれ以上失わずにすみますようにと祈るように残ったがらくたを数える一番大切なものはまだ失っていないはずとは言うものの確信はない一番大切なものはまだ失われていないのではなく残ったものの中から選ぶだけのことなのかもしれない。

あのころはなにかが起こるような気がして怖かったが今はときどきもうなにも起きないのではないかと不安になる来るかもしれない狂うかもしれない苦しむかもしれないかもしれないばかりでなにかが起きてもそれに気づくこともなくただ朽ちていくのだろう。

なにになりたいのと訊かれてなんでもない人になりたいと答えたそのとおりになったのだろうかと思うけれどこんな不安があるうちはまだわたしは
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