晩夏/フユナ
 

曇天の空に
はりつめる夏気の
清らかなうとましさ
そして
むらさきのむくげ


気付くなという忠告
それが聞こえる胸のうち
そう、もう気付いている
それでも気付くなという忠告


曇天の空に
はりつめる夏気と
むらさきのむくげ
を見上げるその眼


手を伸ばしていた
さとられることはのぞまず
手を伸ばしていた

といういはあまりにも停滞し
うずくというには
あまりにも凝密としすぎた
よ、
なあ


ゆきて
かえらず


曇天の空に
むらさきのむくげ
を見上げるその眼
を見つめるこの手





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