ところてん/あおば
 
回転木馬が
ひっくり返って
首がない

恐ろしい光景を
日常化する
ところてん

風景が摩耗化してからは
錆びたナイフで
リンゴを切った
ジャムは
煮詰めるから
どんなに甘くても
構わない
教科書通りに煮詰めていたら
焦げて
鍋の底が
ざらざらになって
使い物にならなくなった
捨てられるだけだと
思っている

フーテンの寅さんだって
帰る家があるのに
帰るところのない
焦げたお鍋と
錆びたナイフと風景は
ところてんのように
細く押し出されたまま
形状記憶されないで
残暑の街で
気ままに生きている

ふりをする

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