車窓に雨、/AB(なかほど)
新しい病院へ向かう車の後部座席で
寝転がって窓の向こうを見ていた
お泊りはもういやなんだけど
指を銜えるほど
もうちっちゃい子供でもない
やがてドアが開き
傘をさしながら
ゴメン
と言った父の気持ちが
今でも判らない
同じ雨が降るわけじゃない
同じ雨が降るわけもない
もうすぐワイパーの向こうに
古くなってしまった県立病院が見えてくる
聞けば父は答えてくれるだろうか
覚えているわけもないのに
同じ雨が降るわけじゃない
父にも
同じ雨が降るわけもない
静かに停まった駐車場で
どこからともなく
ゴメン
と聞こえたのだが
それは父の声ではなく
僕の声なのか
同じ雨が降るわけもないのに
fromAB
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