重塗り/蒼木りん
色鉛筆や
油絵の具はあとでごまかしが利くんだよね
水彩は
厄介なんだよ
透明感があって
きれいだけど
良い紙を使えばいいのかな
今は
何にでも虎の巻があるからね
罪悪感の欠片もない
時間に追われるインスタントな仕事は
インスタントな生活パターンで
時間がもったいないなんて
何にもったいないのか
結局のところ
わからなくなる
そんなの
なんだか嫌になっちやった
速く美しい仕事ができることには
憧れるけど
一つを手にとって
宝物にできた気持ちが
どこかに
置き忘れた
そして失くした
わたし
そんなに起用じゃなかった
やさしくもなれず
わがままにもなれず
自分にも
人にも
薄っぺら
夏の夜は
もう少し長くても
いいんじゃないかと思う
ひとりでも
安全にくらせる場所って
もうどこにもないのかもしれない
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