早春/船田 仰
がりがりにやせてしまった焦げ茶みおろして
ひっかかった青緑を考えるとしようよ
誰かの父親は誰かの息子であったのだし
あの信号はきっと恥ずかしくてあかくなるにちがいない
きっとそうだよ
めずらしく君が革の靴をはいていた
「からっぽ」がはやっているみたい
それは太古からずっとはやりつづけて
今では掴まえられない概念なのだ
鍵を忘れてしまった午後のかたすみで
ぬくぬくとさみしくなっていこうではないか
名前を呼ぶたびに顔をゆがめて覗き込んでは
「からっぽ」みたいに腕をくもうではないか
いつか見たことがあるみたいな瞬間の長さをこえて
帰り道を共有する青緑のサインをみのがさないで
目じりから零れる焦げ付きだなんて
やすいったらありゃしないんだ
ねえ
ぶらさがったかたちをおぼえておかなくても
つぎはもっと愛せばいいではないか
ねえ ねえ きのうとおなじくらいだけのさむさだよ やっと
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