犬と くたびれた ある神話/木賊ゾク
 
神の名に似た少女は
雨の日のこの晩に
ぐんなり冷たくなった
私の終わりの姿を
写真に収めに来たのか

買ったばかりの
慣れない手つきを片手に
塩化ビニールの匂いがする
傘を持って君が来た証拠か


ぼくはここにいるよ


じめじめした季節の神話は
音無しでのろまに動き
溢れくるノイズの洪水を
耳ふさぐ昼下がり

いじめられたあなたの手
うずめてる嘘の中
蝉を踏み潰してまで
あなたはもう強くなったさ

狼少年のような矛盾した孤独を
掬ってあげるのは私だった
ちっぽけな犬に過ぎず
ちっもけな望みに過ぎず

そうしていれば夏草はいらぬ
そうし
[次のページ]
戻る   Point(5)