犬と くたびれた ある神話/木賊ゾク
神の名に似た少女は
雨の日のこの晩に
ぐんなり冷たくなった
私の終わりの姿を
写真に収めに来たのか
買ったばかりの
慣れない手つきを片手に
塩化ビニールの匂いがする
傘を持って君が来た証拠か
ぼくはここにいるよ
じめじめした季節の神話は
音無しでのろまに動き
溢れくるノイズの洪水を
耳ふさぐ昼下がり
いじめられたあなたの手
うずめてる嘘の中
蝉を踏み潰してまで
あなたはもう強くなったさ
狼少年のような矛盾した孤独を
掬ってあげるのは私だった
ちっぽけな犬に過ぎず
ちっもけな望みに過ぎず
そうしていれば夏草はいらぬ
そうし
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