自殺/あおば
 
馬鈴薯
100円
マジックの数字に
目を吸い付けられて
動けない
カラスの勘三郎は
動けなくなって
悪戯な犬にかみ殺された
マジックの数字が悪いのだと
100円ショップの店長は
朝から浮かぬ顔をして
入り口に散らばった黒い羽根を
拾い集め
血に染まった床を
水で流している

犬は何処かに逃げた
逃げたふりして
家に帰って
疲れたふりして
口を開けて
はーはー
息をしている

勘三郎は
指揮官なので
部下達は
手持ちぶさたな
午前中を過ごす
仔猫が通りかかろうものならば
威嚇して
怖がらせて
大慌てで逃げ出すのを
屋根の上から眺めている
暇な連中だと
揶揄するのは簡単だが
勘三郎の命令は
常に
忠実に守り
今までは
仔猫なんて
見向きもしなかったのだが
今朝はなにか
落ち着かないのであろう

店長は
上着を脱いで
ゆっくりと自殺したくなった。
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