ふたたびの雨/岡部淳太郎
 
      ――Sに




ひとつの雨
ふたつの雨
それらが落ちてきて
地上に 着地して

ひとつの感情を形づくる

ひとたびの雨
ふたたびの雨
降れば地上は濡れそぼる
降れば地上は大洪水


私の名は雨
またの名は 水
それらが落ちてきて
地上に落下して
雨は墜落死
雨は息絶えて

ひとつの感情を形づくる

私が雨であるならば
あなたは晴れ
晴天の笑顔
私の元に訪れた
青天の霹靂

ひとたびの雨
ふたたびの雨
降れば私の気がくるう
降れば私の

ひとつの感情が形づくられる

私は雨であり
あなたはひとつの公明正大な 晴天

庭園の子供は雨を眺めては
つぶやく
濡れてしまったら
花が可哀相だと



(二〇〇六年六月)
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